室町時代から続く細川家が伝来の歴史資料や美術品を管理保存し、昭和48年から
一般にも公開されている登録博物館です。

学生時代、寮から学校への通学路にありましたが、その頃は御門はしっかり閉ざされておりました。
数年前懐かしく想い、娘と訪ねてみて書画のコレクションの多さ、立派さにさすが文武両道にすぐれた
お家柄と感心したものです。

この秋御当主護熙氏の英断により春画展-江戸時代に笑い画とも呼ばれ、性描写と笑いが同居した
ユーモラスで芸術性の高い浮世絵展-が開催されました。

閉幕後朝日新聞に掲載された耕論から細川護熙氏-波風嫌う日本社会のよう-と
深沢真紀氏-時代の価値観閉ざす無粋- 山本直樹氏-クズ生み出す自由大事-の
ご意見を紹介しながら思ったことを。

女性の裸があふれる男目線のポルノと違い、春画は着衣や装飾品に身分や状況を
語らせ、余白に文字まで書き入れる。 教養がなければ味わえない多くの情報が一枚に
凝縮されており、文化や風俗を伝える資料として価値があるものなのに、明治以降
キリスト教的禁欲主義によって恥ずかしいものとして封じられていました。
しかしロダンが収集し、モネやピカソにも影響を与えたと言われるほど国際的評価は高い。
大英博物館でも大盛況だったとか。

国公立、私立あわせて20館から開催を断られたところを細川氏が開催されました。
地元の警察署からは風紀を乱さないようにと釘を刺され、電車内の広告を断られ、
18才未満は入場禁止とし、展示作品、図録の扱いにも配慮なさり、しかし
開いてみると抗議は一切なかったそうです。

細川氏はおっしゃいます。 なんだか危なそうという思い込み、とにかく穏便にという
保身。波風立てず、お上にたてつかない。 春画が日の目を見ることができなかつたのは
タブーのためではなく、自主規制という網をはりめぐらせている日本社会のありように
通じると。

子どもにエロを見せたくなければ、それぞれの家庭で大人が怒って教えるべき。
社会で何とかしろは横着ではないかとは山本氏。

いつの時代も芸術かエロかは論争になってきていたと思います。 しかし良いものは良いと
それぞれがきちんと判断を下せる目を持っていなければ成熟した社会とは言えないのかなと
考えます。 成熟した目をお持ちでいざというときには英断を下せる方は素敵です。